今日のMENUは、19世紀の🇫🇷フランスで誕生した由緒ある芋料理の《ポムスフレ(pommes soufflées・ポンムスフレ・ポテトボンボン)》を
①昔ながらの本格的で高度な技術の必要な通常の方法で作った場合と
最近話題になっている
②2枚貼り(2枚1組)で作った技術が要らず誰にでも簡単に出来る
"簡易版”を実際に作り比較して検証したいと思います。
果たしてこの2つにはどのような違いがあるのかを深く掘り下げたサイトがなかったので《ポムスフレファクトリー》を謳う当ブログが実施します(笑)。(´・ω・`)ノシ
ちなみに上の写真は、左の黒い皿が①通常版ポムスフレ(本物)で、右の白い皿が②2枚貼り版ポムスフレ(ジェネリック)になります。
遠めなのでわかりにくいですが、どちらもしっかりと膨らんでいます。
しかし、巻末で様々な角度から見ていくと、2つの仕上がりには明確な違いがあることが判明しました。
本日の材料は、もちろん芋ですが「🥔じゃがいも」ではなくて「🍠さつまいも」でやります。
現時点(2022年3月18日)で、薩摩芋では2枚貼り版ポムスフレをまだ誰もやっていないので、薩摩芋だとどうなるのか読者の皆さんも興味津々じゃないでしょうか(笑)。
ポムスフレは、じゃが芋も含めてうちにとっては看板メニューでもありますが、とりわけ「薩摩芋のポムスフレ」は、当ブログオリジナルのポムスフレであり、シンボルでもあるのでね(笑)。(^^)
それでは、①②双方とも同じ形にするために右にあるセルクル(直径4cm)で丸い型に抜きます。
まずは、最初に当ブログでもお馴染みのいつもの《①通常版ポムスフレ》から作りましょう。
さて上の写真ですが、皮を剥いた薩摩芋に真横からセルクルを垂直に突き刺してグッ!と下まで貫通させます。
メークインで作る場合でも同様に作業します。
さて、これだと芋の繊維は縦向きに入ってるのでを繊維を断ち切ってしまいますが、後ほど繊維に沿った切り方に変わります。
くり抜けるだけ次々抜いていきます。
もし型から芋が抜けない場合、型より口径の小さなスパイスの空き瓶などを台に置き、セルクルの側面を滑らないように両手でしっかりと掴んで下にグッ!と少しづつずらして芋を押し出して抜き出します。
無事に抜けたら両端をまっすぐに切り落とします。
今度は抜いた芋を横向きにして切りますが、ここから繊維に沿った切り方になります。
ちょっと混乱しますけど(笑)、最初に芋の繊維を断ち切るようにセルクルで抜きましたよね?
その抜いた芋を今度は横向きに寝かせると、繊維は縦になるんです。
だからこれを横向きにして切ると、繊維と同方向に切る事になります。(^^)d
ポムスフレを膨らませる場合は、繊維と同じ向きに切った方が膨らみやすいです。
逆に、繊維を断ち切るようにスライスしたものを揚げても大して膨らみません。
そして、切る際は必ずよく切れる薄刃包丁を使ってください。
出刃包丁や骨スキ包丁など厚みがある包丁だと、うまく正確に切れません。( ^^ ;)
写真の包丁は愛用のシェフナイフ(牛刀)です。
薄く正確に切れるので、ポムスフレ用の芋を切る時はいつもこれを使って切っております。(^^)
もし、包丁を研ぐならば前日に研いで準備しておきます。
その包丁を使い、芋を均等に3~3.5mm幅以内で切り揃えます。
切ったら芋のデンプン質を抜くため、水の白い濁りがなくなるまで流水で洗い流してザルごと引き上げて水を切ります。
更によく乾いたサラシかキッチンペーパーに芋を並べます。
上からも1枚被せて手でポンポンと軽く叩いて押しつけて両側から水気を拭き取ります。
そしたら鍋を2つ用意してそれぞれに油を投入しますが、低温用は鍋底から1cmくらい、高温用は適量投入します。
右の白鍋が❶低温用。
左の黒鍋が❷高温(180℃)用です。
2つ用意した理由は温度差の違う油で二度揚げするためです。
低温用が油少なめなのは、作業中は鍋を激しく揺するので、油の飛び散りで皮膚への火傷を防ぐために少なめに入れてます。
まずは注いだ❶冷たい油に芋を投入してから🔥着火し、中火以下弱火以上を保ちそのまま放置。
しばらくすると、芋の周囲から細かな泡がブクブク出てきて鍋底に沈んでいた芋がフワリと油面に浮かび上がります。
環境や条件にもよりますが、浮かび上がるまでだいたい2分くらいですね。
浮いてきたら鍋を前後左右に激しく揺すって芋を鍋の内側にぶつけ続けます。
弱めた火力を時折中火🔥にしながら火力のレバーを手動コントロールして油温を120~130℃間に保ちます。
そのまま揺すり続けてプラス2~3分くらい経つ頃には、写真上のように芋の表面がボコボコとして水膨れのようになってきます。
これは内部の細胞が熱で脆くなり、崩れて空気が入った状態です。
これが次の段階への布石、二度揚げの準備ができた合図です。
すかさず、高温(180℃)の油の中に移すと内側の水蒸気が一瞬で沸騰してポップコーンが弾けるようにポンッ!と約2秒くらいで勢いよく膨らみます。
膨らんだら萎まないようにカリッ!とさせます。
もし、油に落としてもすぐに膨らまない場合は浮いてる芋を揚げ網や箸などで軽く突いてショックを与えると膨らみます。
それでも膨らまずにみるみる焦げた場合は、その芋は残念ながら“失敗”です(笑)。
1回目の作業が無事に済んだら2回目に移りますが、その前に低温用の鍋をボウルに張った冷水に鍋底を浸けて上がった温度を一度クールダウンしてリセットしてから始めます。
あとは1から同様の作業の繰り返しです。
以上で「通常版ポムスフレ」の解説は終わりです。
続いて《②2枚貼り版ポムスフレ》を作ります。
今度は皮をむいたさつまいもをスライサーを使い繊維に沿って1mm以下の極薄に切ります。
芋の繊維は縦向きに入ってるので縦方向にスライスします。
こちらもメークインで作る場合でも同様の作業です。
まぁこれも包丁で切ってもいいですが、何しろ1mm以下なのでスライサーの方がいい仕事をします(笑)。
次にスライスした芋を乾いたサラシかキッチンペーパーに並べます。
こちらの場合は、水に晒す工程を省いてもいいようですね。
芋を並べたら上からも被せて上から両手でポンポンと押し付けて両側から芋の表面の水気を吸い取ります。
水気を十分に拭き取った芋を台に上下に並べます。
下段の芋には、コーンスターチを全体に満遍なく振ります。
これで2枚の間には最初から空洞が出来てる状態なので、あとはそのまま揚げて膨らますだけです。
こちらの場合は、鍋を激しく揺する必要はありません。
膨らんだら萎まないようにカリッ!と揚げれば出来上がり。
こちらの場合は二度揚げ不要です。
揚がったらキッチンペーパーに乗せて油を切ります。
以上で「2枚貼り版ポムスフレ」も作り終わりました。
通常版に比べると、2枚貼り版は呆気なく終わった感があります(笑)。
では以降で2つの違いを色々と見ていきましょう。
ポムスフレというよりもこれは「ポムスフレ風ポテトチップス」と言った方がしっくりきますね。
正直、私はこちらをポムスフレと称することには抵抗があります(笑)。
( ^^ ;)ポムスフレの影武者というか、ポムスフレモドキどういうか、インスタントポムスフレというか…。
なので、この方法で作ったのはこれが初めてです。
しかし、初めてにも拘わらず、初っ端から作れてしまいました。
これにはびっくりですね。
Σ( ̄□ ̄)!
裏を返せば、練習しなくとも手順通りにこなせば誰でも作れるということですね、これは。
なのでこちらの方法であれば、ポムスフレ初心者であっても厳しい特訓抜きでいとも簡単に作成可能ということでしょう。
割る時は、最初にハサミの先っぽを突き刺して穴を開けたら、それを起点にして回りをジョキジョキ慎重に切ります。
上の写真2枚は、右が①《通常版ポムスフレ》
左が②《2枚貼り版ポムスフレ》です。
続いて2枚貼り版ポムスフレの場合の内部の壁面ですが
「通常版ポムスフレ」 |
まず、通常版ポムスフレの場合ですが
「通常版ポムスフレ」 |
カメラの顕微鏡モードで撮影すると、内部の壁面は平坦ではなく凸凹でザラザラとして荒いです。
例えるなら食パン1斤を両手で半分に引きちぎった時にできる断面に似ています。
外側表面がツルツルスベスベなのとは対照的です。
「2枚貼り版ポムスフレ」 |
「2枚貼り版ポムスフレ」 |
カメラの顕微鏡モードで撮影すると、まるで磨き上げられた床のように段差がなくツルツルしてフラットです。
そして、写真だとよく分かりませんが、実物を肉眼でよく見ると、内側の所々がマダラに白く点在してるのが確認できます。
これはコーンスターチや卵白が熱で固まったものが白くなりこびり付いてるのでしょうね。
これも卵白とコーンスターチが混じったものでしょう。
膨らむ直前に、張り付いていた卵白が膨らむと同時に筋のように伸びてそれがそのまま固まってしまったのだと思われます。
とにかく、通常版ポムスフレでは起こりえないことが内部で起きてました。
今回作ってみた率直な感想ですが、2枚貼り版ポムスフレの作成方法を考案した方は大変素晴らしいです。
あの高難易度のポムスフレが誰でも100%確実に再現できてしかも技術がほとんどいらないので画期的だと思います。
私も実際に作ってみて、こんな簡単に膨らむのかと感嘆しました。
Σ( ̄□ ̄)ぉぉ!すげえな、一発で膨らんだ!
ですが、その反面、努力してちゃんとしたポムスフレ(本物)を作れるようになった人からしたら複雑な気持ちで、2枚貼り版ポムスフレは「うーん…なんだかなぁ。。。」で邪道のようにも映りますかね…。( ^^ ;)
まぁしかし、これはこれで大変良いものであることは間違いないので、ポムスフレ風ポテトチップスとして棲み分けをすればいいんじゃないでしょうか。
ただ一つ懸念があって、素人さんはともかく、次世代を担うフレンチの若いコックの皆さんには通常の作り方もキチンと覚えて欲しいな…ということです。
2枚貼り版ポムスフレを作るのは自由ですが、その前にまずは《本物》を知ることですね。
本物とは、本場フランスのポムスフレのことです。
その本物の作り方をしっかりと身体で覚えて、自分の手で作った実物をじっくりと観察した上で、2枚貼り版ポムスフレを作るのならばノープロブレムですが、厳しい言い方をすると2枚貼り版ポムスフレしか作れないならばかなり問題ですね。
確かに通常版ポムスフレを作るのは難しいです。
今ではポムスフレを作り慣れた私でさえ作る度にいつも難しさを感痛感していて、作る前は緊張して少し胃が痛くなるんですね(笑)。
もし膨らまなかったらどうしよう…と(笑)。
しかし、難しいからといって諦めるのは違います。
なぜそんなことを言うのかというと、通常版ポムスフレの場合、芋の状態や、火加減、温度、タイミングの取り方など作る本人の技術によるところが大きいので難しくてまともに作れる人があまりいないからです。
いわば職人技なんですよね。
決して私の頭が硬いからではなく、この2枚貼りの作成方法が蔓延こると将来、フランスの昔ながらの伝統的な作成方法が消滅するかも知れないんじゃないかと憂えています。
ポムスフレは、1837年8月24日(推定)のフランスで、ひょんなことから偶然にして生まれたそうですが、その再現が簡単じゃないんですね。
その偶然生まれたポムスフレを当時のシェフの方がそれっきりにして忘れてしまってたら永遠に闇の中で、2022年を生きる我々はこの素晴らしきポムスフレの存在を知ることはなかったでしょう。
でも幸いな事に、185年経った今でもその技術が脈々と受け継がれて世界に広がり現在に至っています。
でも悲しいかな、今でも本物のポムスフレを提供してる店はごくわずかだそうですね。
簡単じゃないからこそ作り甲斐があるし、こんなに素晴らしい技術を途絶えさせるには惜しいなという思いがあります。
そうして身に付けた技術は自分の一生の財産になるし、そして、その技術を絶やさず後世へと繋ぐためでもあります。
そのために通常版ポムスフレもマスターしていただきたいのです。
将来、通常版ポムスフレが【ロストテクノロジー】とならないようにして欲しいと切に願っております。
その意味は、過去に存在していた素晴らしい技術が、後継者不在や、何らかの理由により未来に引き継げなかったために本物を作れる人がいなくなってしまうことで起こる歴史的な損失です。
ポムスフレは、今流行りの分子ガストロノミーからすれば古典的な料理ですが、絶対に無くしてはいけないかけがえのない料理です。
口幅ったく色々と熱く述べてしまいましたが、失礼をどうかお許しください。
m(_ _)m
今回の作成で得た知見が皆さまのお役に立てますと幸いです。
という訳で以上で終わりますが、当ブログは今後も《ポムスフレマイスター》として「通常版ポムスフレ」と共に作品を作り続けたいと思います。(´・ω・`)ノシ
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